牙イレ

佐久間の過去

気がつけば、児童養護施設の裏山で倒れていた。
その前のことは、何も思い出せない。
有人がオレを見つけてくれて、施設に入れてくれた。

それから、オレと有人はいつも一緒にいた。
サッカーして、たまには春奈ちゃんのおままごとにも付き合ったりして。
何をしていても、有人が隣にいるのが当たり前だった。

有人が鬼道のお父さんに引き取られて、オレもすぐに佐久間家に迎え入れられた。
会えなくなっても、オレの心の中にはずっと有人がいた。
だから、サッカーを続けた。

そしたら、帝国学園でまた会えたんだ。
また一緒に走れる、そう思っていた。
入部テストで、有人の圧倒的なプレーを見るまでは。

有人は今、オレの隣にはいない。